作家インタビュー

伝統工芸「漆」に新たな可能性を。日常を彩る作品作りへの思い / sae nakai

長い歴史を持ち、日本が誇る伝統である「漆工芸」。

そんな漆芸をリング・ピアス・ネックレスなどの装身具という新しい形で展開しているブランド、sae nakai。

漆作家 中井彩瑛さんの作る装身具は、漆芸ならではのさりげなくも存在感のある輝きが魅力だ。

そんな「身につける漆」を生み出す中井彩瑛さんに、作品づくりのきっかけや現在の活動について伺った。

― 中井さんが制作を始めたきっかけを教えてください

毎年、父が結婚記念日に母へジュエリーを贈っていて、幼かった私はいつもショップについて行っていました。それがきっかけでジュエリーというものに興味を持って、自分でも作ってみたいと思うようになりました。

― 装身具を作る素材として、何故「漆」を選んだのですか?

ジュエリー作家を目指す為に、大学の芸術学部で初めは金属造形を学ぼうと思っていたのですが、大学の授業の中で華やかな蒔絵や不思議な光沢の漆という素材に惹かれてしまって、そこから漆を学ぶコースに進みました。

漆について知れば知るほど、華やな表現だけではなくて、接着・修繕といった役割だったり「湿気によって乾く」「豆腐や卵白、小麦粉などを材料として使う」だったりと、漆塗りそのものが独特かつ新鮮で、面白い!という風に感じました。漆塗りの歴史や文化を学んで紐解いていく中で、この現代で漆を扱うことの意味を考えるようになりました。

そこからコンテンポラリージュエリーとして、漆を使ったコンセプチュアルな装身具を制作するようになりました。

漆には独特の表情や長い歴史があって、それらを身にまとうことで、美しさと同時に人の心にもフィットするような、そんな装身具を作りたいと思っています。

― 現在はどのような活動を行っていますか?

「日常に漆を取り入れる、新しいカタチ」を作りたいと思って、美しさと同時に人の心にも馴染むような装身具を作るために日々制作に励んでいます。

sae nakaiで作る装身具は、流行りにとらわれないものを目指しています。

季節ごとのコレクションという形ではなく、試行錯誤を重ねた上で自信を持ってお届けできる作品だけを、いろんなシリーズにして展開しています。

装身具そのものだけではなくて、写真や文章からも世界観を楽しんでもらえるように、作品の包装やWEBサイト、SNSなど、sae nakaiというブランド全体の世界観作りにもこだわっています。

その他にも広島を拠点にしつつも、関東や関西などのイベントにも参加したりしています。

― 漆の装身具はどのような工程で作られているのですか?

手作業で加工した金属をベースに、漆・貝・木・和紙などの素材を組み合わせて作っています。

ベースの金属に漆を塗るために、漆の焼き付けという甲冑に使われる方法を使っていて、その上に和紙を貼り付けて、さらに何層も何層も漆を薄く塗り重ねています。

他にも、0.1ミリ程の薄さに加工した薄貝を貼り付ける螺鈿(らでん)という技法や飴色に精製した漆に色付けをした色漆などを使って、漆のいろんな表情が見えるように工夫をしています。

伝統工芸である漆の魅力を、もっと知ってもらえる活動をしていきたい

― 今後はどんなことに取り組んでいきたいですか?

まずは、作品を通してもっと多くの人に漆の魅力を知ってもらえるような活動をしていきたいです。

そのためにも、拠点となる本格的なアトリエを作りたいと考えています。

漆の製品は本来お手入れを繰り返しながら末長く使うものなので、装身具だけではなくさまざまな漆製品をお直しする窓口を作って、日常に漆を取り入れやすく長く使い続けられる環境を作っていきたいと思います。

その他にも、装身具のレンタルなどの形でより幅広い皆様に手にとっていただけるよう工夫しながら展開して、ゆくゆくは「日本の伝統工芸を生かしたジュエリー」として、海外に向けて発信できたらいいなと思っています。

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